東京福祉大学で過去3年間に約1400人もの留学生が所在不明になっていることが分かり、話題になっています。この事件について非常に問題だと感じたので、どういうことが起きているのか自分なりにまとめてみました。
東京福祉大学について
東京福祉大学は群馬県伊勢崎市に本部を置く私立大学です。伊勢崎の他に池袋、王子、名古屋と4つキャンパスが存在します。2000年に開校されているので、大学としてはかなり新しいと言えます。4つの学部が開設されており、受験情報サイトを参照すると偏差値は35~40程度のようです。
東京福祉大学には約5000人の留学生が在籍しており、これは早稲田大学に次いで国内で2番目の数字だということです。
なぜこんなに多くの留学生?
東京福祉大学がここまで多くの留学生を受け入れている理由として、国からの補助金が目的ではないかという疑いがあります。それもあるかもしれませんが、単純に留学生の入学金や授業料による収入が主な目的ではなかったのかというのが個人的な見解です。
研究生というグレーゾーン
産経新聞の記事によれば東京福祉大学社会福祉学部の平成30年度、ベトナムや中国などから3179人留学生を受け入れており、そのうち65%が「研究生」という名目になっています。外国人研究生というのは正規に日本の大学に入学する前に日本語を学ぶなどの目的で各大学が定員外で受け入れいている留学生のことで、法令上の規定がなく、各大学の判断で募集してます。つまり、「研究生」として大学の定員を無視して留学生を集められるだけ集めていたのではないかと推測できます。
東京福祉大学では27年度から3年間で研究生を含めた留学生数が約3.7倍に急増していて、教室不足のために王子キャンパスではアパートの一室や銭湯の2階を利用していたということなので、客観的にみても異常事態だと言えるのではないでしょうか。留学生向けのパンフレットの表紙には「学位の取得が、あなたが『お金持ち』になる夢につながる」という文字が大々的に掲げられていて(下の動画を参照)ある種の幻想を抱かせて留学生を勧誘していたのではないかと疑ってしまいます。
少子化の影響か
現在日本では少子化の影響で一部のブランド大学を除いた大学の経営は危機的な状況です。平成29年度、定員割れをしている大学は約40%もあります(平成8年度は約4%)。単純に利益目的での大学経営を考えれば、日本人の学生を集めるより、外国人留学生を集めることを考えたほうが効率が良さそうです。さらに、研究生という名目であれば定員を無視してより多くの学生から入学金や授業料を集めることができるわけですね。
国費外国人留学生制度について
日本では留学生支援のための補助金制度があります。返済不要な奨学金のようなものですが、対象となるのはごく一部の留学生だけです。また今回所在不明となっている留学生は研究生という扱いであり、研究生は正規の留学生と違って国費留学生の対象ではありませんし、各種奨学金も基本的には受け取ることはできません。なので、東京福祉大学は留学生に対する補助金が目的であったとは考えずらいです。(留学生を受け入れることにより大学自体が国から補助金をもらっていた可能性はあります)
留学生が消えた理由
いくら大量に留学生を集めたとしても、きちんとした教育をして学位を取得させていればなんら問題はないのですが、今回は3年間で1400人もの留学生が所在不明になってしまっています。いったいなぜこんなに多くもの留学生が姿を消しているのでしょうか。理由は大きく2つ考えられます。
1.大学から満足なサービスが受けられなかった
上のニュース映像で除籍されたモンゴル人留学生が「期待していた授業内容ではなかった」と回答しています。サンプルが一人しかいないのでこれが全てだとは思いませんが、学ぶ意欲はあったものの大学で満足な教育が受けられなかったため通学しなくなったという留学生は少なからずいるでしょう。前述した通り、銭湯の2階を使わなければいけないほど施設が不足していたわけですから、一人ひとりに十分なサービスが提供されていなかったというのは概ね事実のはずです。
2.密入国の窓口になっている
発展途上国に比べ日本は賃金が高いので、日本に出稼ぎに来たいという外国人はたくさんいます。就労ビザに比べ就学ビザは用意に取得できるため、はなから日本の大学で勉強する意思はなく働きたいがために留学生を装っていた可能性が考えられます。これはやや陰謀論チックですが、実際に大学が組織的に密入国を斡旋していたとしたらかなりやばい問題です。
上記どちらの理由にしても、就学ビザが切れた状態で日本に留まっていると不法残留ということになってしまいます。文部科学省と入国管理局が調査を行っているとのことですが、これだけの所在不明者の人数がいては、すべての(元)留学生の所在を把握するのは不可能なのではと思ってしまいます。
過去にも不祥事を起こしていた
東京福祉大学は過去に今回の件とは全く関係ない不祥事を起こしています。事件の概要をざっくり書くと
1. 2008年、東京福祉大学の創立者で理事長・総長だった中島恒雄氏が複数の教職員に対する強制わいせつ罪等で逮捕され実刑判決を受ける。
2. 東京福祉大学は今度中島氏を大学経営に関与させないと発表し、大学の公式HPでも「本学の経営や教育に関与することはない」と掲載。文部科学省に対しても同様の内容を報告した。
3. 2010年、東京福祉大学は中島氏を服役後に事務総長として雇用し総長時代と同額の給与を支払っていた。さらに中島氏が在籍する企業に業務を委託するとの名目で、大学から中島個人の口座に約2000万円が振り込まれていた。
4. この状況を問題視した文部科学省は東京福祉大学が2011年に学部を新設しようとした際、これを認めなかった。
1のセクハラ時点でかなりの問題だと思われますが、3は世間をバカにしているとしか言いようがないですね。日大アメフト部の危険タックル問題のときにも思ったのですが、大学という組織はトップに権力が集まりやすい仕組みになっているのでしょうか?ちなみに運営体制が問題視され学部新設が認められないというのは、日本の大学としては史上初めての出来事だったそうです。
まとめ
大量の留学生の所在が不明になっている理由ははっきりとはわかりませんでしたが、過去の不祥事を調べてみても、運営体制にかなり問題のありそうな大学です。29年度に東京福祉大学は所在不明者を0人と文部科学省に偽った報告しているため、大学自体が外国人の不法在留を暗に認めているのは事実です。実際に大学が外国人の就学目的以外での入国を斡旋していたり、ブローカーと結託しているようなことがあってもおかしくありません。迅速な実態の解明が求められます。
これはやばいねー
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2019年3月16日
「消えた留学生」、東京福祉大の700人所在不明に (TBS NEWS) – https://t.co/lpSVMX3jgr