裏表ラバーズの考察

有名ボカロP「現実逃避P」として知られるロックバンド・ヒトリエのボーカル・ギターのwowakaさんが4月5日、急性心不全で亡くなるというショッキングなニュースがありました。現実逃避Pは「ワールズエンド・ダンスホール」「ローリンガール」など数多くのボカロ史に残る名曲を生み出していますが、今回は私が特に好きな「裏表ラバーズ」の歌詞の考察をしてみたいと思います。

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「裏表ラバーズ」の歌詞の考察

歌詞全文

裏表ラバーズ
作詞・作曲:wowaka(現実逃避P)

良いこと尽くめ の夢から覚めた私の脳内環境は,
ラブという得体の知れないものに侵されてしまいまして,それからは。

どうしようもなく2つに裂けた心内環境を
制御するだけのキャパシティなどが存在しているはずもないので
曖昧な大概のイノセントな感情論をぶちまけた言の葉の中
どうにかこうにか現在地点を確認する目玉を欲しがっている,生。

どうして尽くめ の毎日 そうしてああしてこうしてサヨナラベイベー
現実直視と現実逃避の表裏一体なこの心臓
どこかに良いことないかな,なんて裏返しの自分に問うよ。
自問自答,自問他答,他問自答連れ回し,ああああ

ただ本能的に触れちゃって,でも言いたいことって無いんで,
痛いんで,触って,喘いで,天にも昇れる気になって,
どうにもこうにも二進(にっち)も三進(さっち)もあっちもこっちも
今すぐあちらへ飛び込んでいけ。

もーラブラブになっちゃってー 横隔膜突っ張っちゃってー
強烈な味にぶっ飛んでー 等身大の裏・表
脅迫的に縛っちゃってー 網膜の上に貼っちゃってー
もーラブラブでいっちゃってよ! 会いたいたいない,無い!

嫌なこと尽くめ の夢から覚めた私の脳内環境が,
ラブという得体の知れないものに侵されてしまいまして,それからは。

どうしようもなく2つに裂けた心内環境を
制御するためのリミッターなどを掛けるというわけにもいかないので
大概は曖昧なイノセントな大災害を振りまいたエゴを孕ませ
どうにかこうにか現在地点を確認した言葉を手に掴んだようだ。

どうして尽くめ の毎日 そうしてああしてこうしてサヨナラベイベー
現実直視と現実逃避の表裏一体なこの心臓
どこかに良いことないかな,なんて裏返しの自分に問うよ。
自問自答,自問他答,他問自答連れ回し,ああああ

ただ本能的に触れちゃって,でも言いたいことって無いんで,
痛いんで,触って,喘いで,天にも昇れる気になって,
どうにもこうにも二進(にっち)も三進(さっち)もあっちもこっちも
今すぐあちらへ飛び込め。

盲目的に嫌っちゃってー 今日いく予定作っちゃってー
どうしてもって言わせちゃってー 等身大の裏を待て!
挑発的に誘っちゃってー 衝動的に歌っちゃってー
もーラブラブでいっちゃってよ! 大体,愛,無い。

もーラブラブになっちゃってー 横隔膜突っ張っちゃってー
強烈な味にぶっ飛んでー 等身大の裏・表
脅迫的に縛っちゃってー 網膜の上に貼っちゃってー
もーラブラブでいっちゃってよ! あいあいあいあいない!

考察

この曲は主人公の表の感情と裏の感情のせめぎ合いや葛藤を描いています。『現実直視と現実逃避の表裏一体なこの心臓』という歌詞から現実直視と現実逃避が表裏の感情の正体だと分かります。

『もーラブラブになっちゃってー』からはじまるサビの部分はセックスを連想させられるので、現実逃避のために快楽に溺れる主人公の心情を描写しているのではないかと思います。そしてサビの最後では毎回強烈な否定の言葉で終わっていて、現実直視という裏表の反対側の感情に戻っています。

サビ前の『ただ本能的に触れちゃって』から『今すぐあちらへ飛び込んでいけ』の部分は、主人公が自分の意志がなく、ただ本能的に流されるように快楽に飛び込んでいく様子を描いているのではないでしょうか。

『そうしてああしてこうしてサヨナラベイベー』という歌詞については、「ベイビー」に「サヨナラ」する、つまり堕胎(妊娠中絶)の意味を含んでいる可能性があります。また、『会いたいたいない,無い!』という歌詞はパートナーに会いたいという気持ちと会いたくないという気持ちが入り混じっている状態を表すとともに、「胎内ない」つまり子宮の中に子供がいないという意味も含まれているかもしれません。ただ、この2つについては深読みしすぎている可能性は大いにあります。

1番では『どうにかこうにか現在地点を確認する目玉を欲しがっている,生。』と現在の制御不能な自分の状態をなんとか知りたがっている様子ですが、2番で『どうにかこうにか現在地点を確認した言葉を手に掴んだようだ。』と何かを悟っています。主人公の悟った内容については最後のサビの締めくくりの部分である『大体,愛,無い。』『あいあいあいあいない!』がそれに当たるのではないかと個人的には解釈しています。

「現実逃避のために快楽を求めてしてしまうセックスなんかに大体愛はないのだ」と現実直視をしているのにもかかわらず、また現実逃避のために快楽を求めてしまう。というのがこの曲の歌詞の構造がの大枠になっているように思います。最後の『あいあいあいあいない!』の「あい」は「愛」と英語の一人称の「I」がかかっていて、「愛がない」と「自分(I)がない」というダブルミーニングになっているとも読み取れます。

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語感を楽しんだほうがいいかも

ここまで割と直接的に歌詞の意味を考えてみましたが、もしかしたら私たちが考えているほど歌詞に深い意味は込められていないかもしれません。ボカロ曲特有の調子・リズムが重視されている感じもあるので、言葉遊びのようなものが多く、一字一句細かく意味を解釈しようとするとするのはとても困難です。『ラブという得体の知れないもの』に翻弄される主人公の心情と見事にマッチする中毒的な旋律を私は楽しむことにします。

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RADWIMPSの影響

裏表ラバーズについて調べていたら、RADWIMPSの「おしゃかさま」に似ているのではないかという意見を見かけました。たしかに早口で畳み掛ける歌詞の雰囲気が似ているかもしれません。「おしゃかさま」の『あっち こっちそっちってどっち』と「裏表ラバーズ」の『二進(にっち)も三進(さっち)もあっちもこっちも』のように部分的にとても似ている箇所もあります。

私としては偶然この2曲が似てしまっただけなのではないかと思っているのですが、「おしゃかさま」が収録された「アルトコロニーの定理」というアルバムが発売された約半年後に「裏表ラバーズ」がニコニコ動画に投稿されているので、もしかしたら多少影響を受けたということもあるかもしれませんね。

おわりに

wowakaさん(現実逃避P)はこれまで数多くの名曲を生み出してきました。本来ならもっともっとさらに多くの名曲を世に出していたはずです。その才能を考えれば、米津玄師さんのように爆発的にヒットすることだって大いに考えられました。31歳という若さで亡くなってしまったのは残念でなりません。ただ、これまでに生み出してきた楽曲は永遠に愛され続けるでしょう。

wowakaさん(現実逃避P)のご冥福を心よりお祈りいたします。

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